塗料と塗装方法

クリーニング液と塗料の種類

鉄道模型の線路はメンテナンスでクリーニング液を使うので、塗料はクリーニング液で溶けにくいものを選ぶ必要があります。市販のレールとクリーニング液の組み合わせでも、枕木の塗料がぼろ布に付着することはありますが、枕木の塗料が溶けて流れるほどではありません。

入手しやすい模型用塗料では、ラッカー系の方がエナメル系よりも耐性が高いようですが、両方ともレールクリーニング液で溶けるので、なるべくなら集電性向上剤等をご利用いただければと思います。

レールクリーニングの際に一番塗装がはがれやすい場所は、一番高い場所にある犬釘部分です。複数の種類の塗料を組み合わせる方法もありますが、ラッカー系の上にエナメル系を使う場合では、枕木をラッカー系としてバラストをエナメル系の方がよいでしょう。

2色塗りする方法

凹凸のある大きなものへの塗装となるので、バラストを缶スプレー塗装として、枕木を筆塗りの方がよいでしょう。なお、枕木の色がはみ出した場合のタッチアップは、瓶入りの近似色を使う方法と、缶スプレーの蓋にスプレーを吹き出して筆塗りする方法があります。なお、スプレーの塗料は普通の塗料よりは薄まった状態で、ガスも含んでいるため、安易に栓の付く容器に移し替えないようお願いします。

吹き付ける順番

先にバラストの色を吹き付けて次に枕木の色を筆塗りする方法と、先に枕木の色を吹き付けて次にバラストを筆塗りする方法とがあります。前者の方が何かと楽でしょう。なお、バラストの砂目吹き塗装を行うためには、先にバラストを吹き付け塗装とし、枕木が後から筆塗りである必要があります。

Tタイプの場合では、枕木の色は混色した方がいいので、道床部分を吹き付けとして、マクラギを2色混合で筆塗りの方がよいでしょう。枕木が道床から高く飛び出しているので、枕木の筆塗りも行いやすいでしょう。

Kタイプの場合では、枕木は混色は必須ではありませんが、道床と枕木の高さの差が小さいので、枕木を筆塗りする際にはみ出しやすい面もあります。しかし、凹凸の凹部分を筆塗りするのは大変なので、やはり先にバラスト塗装を行って後からマクラギを筆塗りする方がよいでしょう。

プラスチック模型用塗料をご利用ください

推奨の塗料として模型用のラッカー系を挙げていますが、ラッカー系を使う場合も他の塗料を使う場合も、自己責任で選んでいただくようお願いします。基本的には、プラモデル用のプラスチック用の塗料をご使用ください。プラモデル用ではない塗料や金属用の塗料、またプラモデル用ではないシンナーや金属用のシンナーの使用は、道床素材の変形・ひび割れ・溶け出しの恐れがあるため、使用しないでください。なお、ABSライクと呼ばれる素材の正体は、紫外線を使った光硬化樹脂です。なお、今後素材をアクリルに変更予定です。

積層跡とスプレー塗装

塗装はレールとジョイナーを外した状態で行います。積層跡は2種類あり、表面の水平面の方が目立ちます。

道床水平面には枕木と交差する方向に筋状の積層跡があります。枕木と交差する方向なので目立たないようにするために、艶消し塗料を使うことを推奨します。既存の道床との組み合わせの観点から、バラスト部分に半艶塗料を使う方法もありますが、積層跡は艶消しよりは目立ちやすくなります。なお、枕木部分もなるべく艶消しで塗装いただきますようお願いします。

道床側面の斜めの部分にも積層跡がありますが、こちらは表面程は目立たないでしょう。スプレー塗装で積層の隙間に塗料が入り込むようにするには、道床に対して水平方向からも吹き付ける必要があります。(この対応方法は、ABSライクの場合です。)

同様に枕木の縦の面にも積層跡がありますが、厚塗りすれば目立ちにくくなります。凹凸の凹の角の部分に塗料が行きわたるようにするためには斜め方向からの吹き付けとなりますので、あまり気にしないでいいでしょう。なお、枕木の縦の面に塗料が行きわたっていない場合でも、目立ちにくい部分なので、気にならないならそのままでもよいでしょう。

スプレーは厚塗りか砂吹きで

道床の積層跡を目立たなくする方法として、厚塗りと砂吹き塗装があります。

通常模型のスプレー塗装では、薄く塗って乾かして、また薄く塗って乾かしてと、複数回に分けて薄く塗装することが推奨されています。これは細かいディテールを厚塗りで潰さないための方法論です。道床素材では細かい凹凸を埋めてしまうことが重要ですので、厚塗りする方法があります。厚塗りをしたいので、スプレーとの距離も通常より短めでかまいません。ただし、あまりにも塗料が多く垂れるような状態は避けてください。

一方で表面がザラついた砂吹きにすることで、積層跡をが目立ちにくくする方法もあります。空中を飛散する塗料の粒子が少々乾きすぎてから道床素材に付着する塗装方法です。缶スプレーを離したり、ノズル部分の押し下げ量を減らしたりします。押し下げ量を減らす方法としては、間に5円玉を挟む方法もあります。

砂吹きは塗料の粒が乾燥して凹凸を作るため、下地を通常の吹き付け塗装や厚塗りにしている場合は、よく乾燥させてから砂吹きを行ってください。なお、始めから砂吹きで塗装を行う方法もありますが、その場合は塗料を大量に吹き出す必要があります。

塗装の方向としては、塗り残しができないよう、色々な方向からスプレーを吹き付けます。なお、乾燥後に塗料が足りていない場所があった場合は、追加で吹き付け塗装となります。

積層跡が一番目立つのは道床の水平部分ですので、水平部分に向かって厚塗りするとよいでしょう。

なお、厚塗りすればするほど枕木部分が平面ではなく中央が高く膨らみますので(特にABSライクの場合)、段差の少ないK社用に厚塗りする場合は、程々にした方が枕木は塗りやすくなります。

塗料の組み合わせ

積層跡が目立たないようにするには艶消し塗料を使う必要があります。バラストの缶スプレー塗装は、艶消しを販売しているタミヤを推奨します。筆塗りや調色してエアブラシといった場合は、各自探求いただきますようお願いしいます。

なお、砂目吹き塗装をする場合では、グレーをベースに白っぽい色を吹き付け、その後黒っぽい色を吹き付けるとよいでしょう。特に黒に関しては、純粋な黒は色が暗すぎるので、黒っぽい色を選ぶのがよいでしょう。

砂目吹き塗装に関しては、缶スプレーを押す力を少なめにして、飛び散る塗料の粒が多くなるように調整します。ぎりぎり塗料が吹き出すくらいの押さえ方では、塗料が大きすぎて勢いも弱いので、顔や手や体などや床や壁等にも飛び散るので注意してください。また、押さえすぎると通常通り霧状になって砂目吹きには小さくなりすぎますので注意してください。

砂目吹きの場合は初めから道床に吹き付けるのではなく、道床のそばの何もない空間に砂目吹きで吹き出し、そのままの押さえ方でよい場合に道床に吹きかかるようにするなど、十分に注意して行ってください。なお、適度な砂目吹きの場合でも、塗料が周りや体に飛び散る他、風に流されるので注意してください。

砂目吹き塗装に失敗して大きな塗料の粒が付着した場合については、枕木の塗装をすると目立たなくなるので、あまり気にしなくてもよいでしょう。なお、後から吹き付けた黒っぽい色があまりにも吹き付け過ぎの場所がある場合は、その場所だけ後から白っぽい色を吹き付けることも可能ですが、ほどほどでも大丈夫でしょう。砂目吹き塗装に失敗してしまったと思ったときは、一番良好な塗装に仕上がった物にだけ、枕木の筆塗りを行って、そのうえで残りの砂目吹き塗装の判断を行っても、遅くはありません。

Tタイプ推奨塗料

道床:缶スプレーの吹き付け・単色の場合
  • タミヤ AS-11 ミディアムシーグレイ(RAF) つや消し
  • タミヤ AS-2 明灰白色(日本海軍) つや消し
  • (タミヤ AS-32 ミディアムシーグレイ2(イギリス空軍) 半光沢)

艶消しの缶スプレーなのでそのまま使用できます。枕木の塗装テストの観点からは、道床裏側にも吹き付けるといいでしょう。

半艶消しであっても、僅かに青味の入った色がよい場合は、タミヤ AS-32 ミディアムシーグレイ2(イギリス空軍)を使うといいでしょう。

道床:缶スプレーの砂目吹き白
  • クレオス 107 キャラクターホワイト 半光沢
  • クレオス 69 グランプリホワイト 光沢
  • (タミヤ TS-7 レーシングホワイト つやあり)

艶消し塗料にこだわる場合では、純粋な白の艶消しを使う方法もあります。

登場当初のファイントラックの色調に合わせる場合、クリーム色味がかなり強いですが、タミヤ TS-7 レーシングホワイトを使う方法もあるでしょう。

道床:缶スプレーの砂目吹き黒
  1. クレオス(バンダイ) SG15 MSファントムグレー 半光沢
  2. クレオス 40 ジャーマングレー 3/4つや消し
  3. (タミヤ TS-82 ラバーブラック つや消し)

上から色が薄い順で、推奨順です。クレオス(バンダイ) SG15 MSファントムグレーは、ガンダムカラースプレーの名称で販売されている缶スプレーです。

木枕木:瓶入り塗料(必要に応じてフラットベース添加)
  • ガイア 1004 ぶどう色2号 半光沢
  • GM 2 ぶどう色2号 半光沢
  • ガイア 203 レッドブラウン 半光沢
  • クレオス 131 赤褐色 半光沢
  • クレオス 41 レッドブラウン 3/4つや消し

艶のある塗料なので、必要に応じてフラットベースを適量加えて塗るとよいでしょう。好みによって艶消し黒など他の色を少量加えて調色するのもよいでしょう。

なお、フラットベースを入れすぎると表面がヒビ割れるので注意してください。なお半艶の場合では、塗料の濃度が高かい方が艶が強くなり、また厚塗りする方が艶が強くなります。

直接枕木に塗るよりは、裏面に吹き付けたバラスト色の上で試し塗りを行う方が無難でしょう。なお、乾燥すると色が変わる場合もあるのでご注意願います。

PC枕木:瓶入り塗料(必要に応じてフラットベース添加)
  • クレオス 97 灰色9号 光沢
  • ガイア 071 ニュートラルグレー 光沢
  • ガイア NC-001 スチールホワイト 光沢

単線PC枕木レール用の推奨塗料です。複線高架レールやワイドPCレールは色調が異なるので注意してください。

艶のある塗料なので、必要に応じてフラットベースを適量加えて塗るとよいでしょう。

GMとガイアの灰色9号は、T社のPC枕木とは色調が異なるのでご注意ください。

なお、フラットベースを入れすぎると表面がヒビ割れるので注意してください。なお半艶の場合では、塗料の濃度が高かい方が艶が強くなり、また厚塗りする方が艶が強くなります。

直接枕木に塗るよりは、裏面に吹き付けたバラスト色の上で試し塗りを行う方が無難でしょう。なお、乾燥すると色が変わる場合もあるのでご注意願います。

Kタイプ推奨塗料

道床:缶スプレー塗料の吹き付け
  • タミヤ AS-2 明灰白色(日本海軍) つや消し
  • (タミヤ AS-32 ミディアムシーグレイ2(イギリス空軍) 半光沢にしたい場合)

艶消しの缶スプレーなのでそのまま使用できます。枕木の塗装テストの観点からは、道床裏側にも吹き付けるといいでしょう。

半艶消しであっても、僅かに青味の入った色がよい場合は、タミヤ AS-32 ミディアムシーグレイ2(イギリス空軍)を使うといいでしょう。

枕木:瓶入り塗料を筆塗り(調色なし)
  • クレオス 33 つや消しブラック 艶消し
  • ガイア 012 フラットブラック 艶消し
  • クレオス 92 セミグロスブラック 半光沢
  • ガイア 022 セミグロスブラック 半光沢
  • GM 10 黒色 半光沢

調色しないのであれば、そのまま黒をぬることになります。なお、調色していない黒は、少々きつい色になるので、好みに合わせて調色をするとよいでしょう。

調色する場合は、以下の色を黒に少量混ぜるとよいでしょう。いずれも、白やグレーの混ざっていない塗料の為、黒いまま、黒の強さを加減できます。なお、下記の塗料を入れ過ぎた場合では、薄め具合や筆ムラ(塗料の厚みの違い)で色が変わる(黒でなくなる)ので、ご注意願います。

直接枕木に塗るよりは、裏面に吹き付けたバラスト色の上で試し塗りを行う方が無難でしょう。なお、乾燥すると色が変わる場合もあるのでご注意願います。

枕木:瓶入り黒塗料に少量添加
  • クレオス 100 マルーン 光沢
  • クレオス CR2 マゼンタ 光沢
  • ガイア 034 純色マゼンタ 光沢

枕木の塗装方法

3Dプリントのため強度の観点から犬釘が大きいこともあり、枕木が若干太めになっております。枕木は側面までは色を塗らず、上面のみに色を塗る方が、太さの関係からは統一感を出しやすくなっております。また、塗装のしやすさや、失敗しにくさの観点からも、犬釘部分以外では、水平面のみの塗装として、枕木側面は塗装しない方がよいでしょう。

また、枕木と枕木の間をつなぐレールの底の下面と接する部分に関しては、レールの底よりも幅を狭くしているので、どのような色でも構いません。上から見た場合では、レールの下に完全に隠れるため、道床の色や枕木の色がはみ出していても問題はありません。なお、レールを真横から見るような角度では、はみ出した色の部分が見えますが、あまり気にしないでよいと思います。

Tタイプのバラスト散布

Tタイプの道床素材は、道床から枕木が高く飛び出していることもあり、ジオラマ等で使う場合では、枕木の間にバラストを散布することが可能です。

なお、Tタイプに限らずバラストを散布する場合では、接着剤がジョイナーとレールの隙間やポイント内部に染み込むことによる接触不良やポイントの故障の可能性がありますので、ポイントやその周りのバラストを固定する場合は特に注意し、自己責任でお願いします。

また、ポイントレールなどバラスト散布が困難なレールがあることに注意してください。